チベットのことを初めて知ったのは大学生の時に見た
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」だったのですが、
その時はあまり印象に残らなかったのです。
中国のことも、チベットのことも全く知らなかったからだと思います。
それから、5年くらいあとに中国の四川省で暮らすこととなり、
チベットが身近になりました。
中国と違う文化・習慣をもつチベット。
自然の美しいチベット。旅行先の候補はいつもラサでした。
でも、結局、チベットには行けずじまいでした。
今一番行ってみたい場所。それはチベットです。
そんな今のチベットを描いたドキュメンタリー「ルンタ」を見ました。
「ルンタ」というのはチベット語で「風の馬」です。
キャスト:中原一博
作品の背景(公式ホームページより引用)
1949年、中華人民共和国を樹立した毛沢東は直ちにチベットへ侵攻。2年後、チベットは事実上、中国の支配下に置かれた。1959年、ダライ・ラマ14世はインドに亡命。後を追うように約10万人のチベット人たちがヒマラヤを越えてインドやネパールに亡命した。2008年、北京オリンピックを目前に控えチベット全土で平和的デモが発生すると、中国当局は容赦のない弾圧を加え、ラサだけでも200名を超えるチベット人が命を奪われた(亡命政府発表)。これによりチベット人の中国政府に対する不信感が高まり、今も増え続ける“焼身抗議”の誘因となった。その他、中国政府の言語教育政策や遊牧民の定住化、天然資源の採掘に伴う環境汚染、チベット人に対する移動の制限なども“焼身抗議”の背景に挙げられる。
映画を見たあと、普段はパンフレットは買わない主義なのですが、
この映画を見たあと、なぜかパンフレットを買っていました。
映画の背景となっているものや映画のその先が見たかったからだと思います。
池谷監督のドキュメンタリーには基本的にナレーションが入りません。
中心人物となる人の語りによって、見る人は映像に映し出される状況を
飲み込んでいくというスタイルです。
今回の語り部は中原一博さん。
ダラムサラで拷問を受けたチベットの方の支援をしておられるそうです。
この映画のテーマはチベットの方の「焼身」です。
なぜ、「焼身」をするのか?
中原さんは「中国の支配に抗議するためもあるだろうけど、
焼身した人のバックグラウンドを知らなければ、本当の理由はわからない。」
と言って、焼身した人を知る人にインタビューしたり、学校を訪れたり、
故郷を行ったりしながら話は進みます。
チベットの方はダライラマ法王やチベット仏教の教え、そしてチベット人の習慣を
本当に大事にしています。
それが映像を通して伝わってきます。
ヤギのお乳を搾っていました。チベットの風や雲や太陽の光が
彼女を包みます。美しい映像でした。
また、馬に乗った遊牧民の青年が「都会に憧れない?」と問われ、
「ここがいい」といいます。足るを知った気高い横顔でした。
チベットの方々が大切にする仏教の教え、
「利他の精神」「慈悲の心」は、
日本で物質的な豊かさにまみれて、
給与明細で一喜一憂する私のような日本人にはすくには理解できません。
また、相手の苦しみも受け入れようとして、
燃えさかる炎に自らの身を投じる覚悟を思えば、
中国の脅威に対して、集団的自衛権を認めるとか認めないとか、
憲法9条を守るか守らないかの議論など、
ほんの小さなことのように思えてくるのでした。
見えないものを信じる力。それをチベットの方は持っている。
多分、それはわたしたちが失いつつあるものかもしれません。
では、さようなら~