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シネマ歌舞伎【研辰の討たれ】潔く散る武士の社会で「死にたくねぇ!」と叫ぶ研辰が訴えかけるものとは?

錦通りをお散歩

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久しぶりに歩いてみましたが、

外国人の観光客が多かったです。

食べ歩きできるようなものも多く売っていました。

きゅうりの一本漬けとかさつま揚げとか、

そういうもの。食べませんけど。

あ、そうそうもうすぐ土用の丑の日だからか、

うなぎもよく目につきました。いい匂いでした。

 

こんばんは。

わかばです。

 

研辰の討たれ

シネマ歌舞伎を見てきました。

この演目は実は今年の正月に大阪の松竹座でみて、

そのストーリーの面白さにとりこになってしまった演目です。

wakaba78.hatenablog.com

今回は野田秀樹脚本・演出の「研辰の討たれ」が

シネマ歌舞伎でみられるということ、

それから、主演が今は亡き、中村勘三郎だということで、

観に行ったわけですが、行ってビックリ!

平日だというのに、もう「残席わずか△」になってます!

 


シネマ歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』

演出:野田秀樹

主演:中村勘三郎

あらすじ:

赤穂浪士江戸城への討ち入りを果たし、あだ討ちが流行していたころ。近江の国、粟津藩では、研屋あがりの武士・守山辰次(中村勘三郎)が世渡りのうまさで、ほかの武士たちのひんしゅくを買っていた。ある日、辰次が家老の市郎右衛門(坂東三津五郎)にいたずらをしたところ、その家老が息を引き取ってしまい……。

(※以下、ネタバレを含みます)

野田版 研辰の討たれ [DVD]

剣術修行の場面!

赤穂浪士」討ち入りを美談としてもてはやしながら、

剣術修行にはげむ武士たちと研辰との会話から、

舞台はスタートします。

その会話がおもしろいのなんの・・・

笑いが止まりませんでした

「討ち入りなんざ、バカのするこった!」という研辰に対して

「貴様!義士を愚弄しおって!」とかそんな感じなんですが、

やっぱり、日本語はリズムですね~。

小気味よいリズムの日本語が続きます。

それから、衣装がまたいいんです。袴が迷彩柄!

 

カラクリ人形の場面!

正月にみた研辰は普通に殺していましたが、

ここではいたずら。ちょっとカラクリ人形でビックリさせてやろう

くらいだったんですが、そのときに家老が脳溢血で死んでしまいます。

それで、そのカラクリ人形も面白いし、

カラクリ人形がでてくるしかけを

家老が踏みそうで踏まないのところも面白かったです。

(予告編で三津五郎がスキップしているところです。)

 

宿屋の場面!

家老が死んでしまったので、

市川九市郎、才次郎の兄弟は仇を討つため逃げる研辰を

追うがなかなか見つからずもう二年。

もう何のために自分たちは旅をしているのか、

わからなくなってきている兄弟でした。

だけど、四国の宿屋で偶然同じ宿に泊まります。

研辰は「自分は仇討をしている!」とうそをついて

番頭や芸者やその他の客を味方につけます。

大衆も仇討さわぎに浮かれているので、

芸者は仇討をしているだけで言いよってきたりします。

この場面は実は踊りがよくって、暗い中、仇討の相手を探しながら、

踊るという演出はもう最高でした。

 

もみじの場面

さてさて、クライマックス。

研辰と九市郎、才次郎が対峙し、

それを大衆が取り囲みます。

研辰はまたお得意のしゃべくりを使って命乞いをします。

 

「生きてぇ!死にたくねぇ!」と涙を流します。

 

そこはお寺でその寺の住職が「助けてやりなさい」と言います。

一旦は刀を鞘に納める兄弟・・・

生き残った喜びをかみしめる研辰・・・

しかし、結局は兄弟は研辰を殺してしまいます・・・。

 

これは仇討なのか?殺人なのか?

仇討といってみたところで殺人と変わらないのではないか?

そんな迷いが兄弟の心に芽生えます。

そして、一葉の真っ赤な紅葉が研辰の上に落ちてきます。

 

というところで幕がおります。

 

さいごに

心に残ったシーンは多々ありますが、最後のほう、

大衆が「仇討を!仇討を!」とはやし立てるシーンです。

これに対し、研辰は「兄弟は刀でわたしを殺す、あなたがたは、

口でわたしを殺すんです!」というシーン。

現代とまったく同じです。

何の熱に浮かれた大衆は一人の人間を死なせてしまうほどの力を持つ。

それは恐ろしいことだと研辰は訴えかけているにちがいありません。

研辰は武士の中にあっても、町人あがりの自分を卑下することなく、

ただ自分のルールを信じて生きてきた。それは「生き抜くこと」。

どんな世の中でも、誰に何を言われようと、

明るく生き抜く研辰に笑わされ泣かされ、そして全部持っていかれる歌舞伎です。

これも、十八世勘三郎の成せる技です。

 

自分に自分だけのルールを。

では、また~。

 

 

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