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映画No52【秋刀魚の味】人間、結局ひとりぼっち。

大学の時、一般教養の授業で、

「映画論」という授業がありまして、

興味本位でとっていたんですが、

すごくおもしろくて、

一番前できいていました。

特に「視線の送り方」みたいなところの説明を

今でも覚えています。

 

こんばんは。

わかばです。

 

秋刀魚の味(1962/日本)

「映画論」の授業のときに、

よく題材で使われていたのが、小津安二郎の映画でした。

今まで「東京物語」しか見たことがなかったので、

今回は「秋刀魚の味」を見てみました。

「秋刀魚の味」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]

 

監督:小津安二郎

主演:笠智衆

   岩下志麻

 

あらすじ

昭和30年代、日本の高度経済成長期。

主人公、平山は会社で働くサラリーマン。

妻に先立たれ、子供は3人。

幸一、路子、和夫。

幸一は団地暮らしのサラリーマン。

ちょっと口うるさい妻がいる。

路子は24歳。結婚適齢期だが、

実家で主人公や弟の世話を焼いている。

和夫は学生。

主人公は同級生に「路子を嫁にやれ。いい人がいるから。」

と言われるが、すぐには行動に移せない。

もう一人の同級生は娘くらいの若妻をもらっていた。

そこで、同窓会が開かれる。

恩師は「鱧」という魚を食べたことがないくらい貧乏している。

酔っぱらった恩師を家まで送っていくと、

うすぎたないラーメン屋に中年独身の娘がいた。

恩師もまた妻に先立たれ、娘に自分の世話をさせて、

嫁にやれなかったとボヤいていた。

同級生は主人公に「お前もああなるぞ!」と言い、

そこで、主人公は自分が一人になっても

娘を嫁にやる決心をする。

 

「この人にはわたしがいなければ」と思うのは逃げだと思う。

とまぁ、あらゆる場面が現代に通じています。

逆に言えば、人間や家族の本質は時代が変わっても

変わることはないのでしょう。

主人公の娘は結婚話を持ち掛けられた時、

「父さんや弟の面倒を誰がみるの?」とか言って

まともに取り合っていませんでしたが、

「自分の生活、変えるのいやなだけちゃうん?」

と思いました。

「結婚したい。でも、出会いがない」という独身の人、

「仕事したい。でも、子供をみてもらえない」という専業主婦の人、

「~したい。でも、~」という人は自分の生活を変えるのが嫌なだけです。

今の生活が気に入っているのです。楽だから。

主人公の父親も、娘が何かと世話を焼いてくれる

この生活が気に入っているんです。

それに、「〇〇にはわたしがいないと」と思うのは逃げです。

〇〇の存在を利用して、自分のアイデンティティを確立したいだけです。

 

人間、結局ひとりぼっち

だから、最低限、自分のことは自分でできるようにならないといけません。

この映画でも主人公の長男幸一がエプロンをして、

台所に立っているシーンがありました。

 

さて、主人公の妻はどうして亡くなったのでしょう?

それは明らかにされませんでしたが、多分、戦争で亡くなったのかな

と推測しています。

主人公が恩師のラーメン屋で軍隊時代の部下に出会います。

そこで、二人でバーにいくのですが、

そこのママが「死んだかあさんに似てる」と主人公は言います。

そして、そのバーでは軍艦マーチをかけ、敬礼をするだけで、

盛り上がり、「日本は負けてよかった」と主人公がつぶやきます。

主人公は路子の結婚式のあと、またそのバーに立ち寄りますが、

戦争から帰ってきた男たちが呑んでいます。

ん?この人たちはほんとに生きてるの?このバーは死の世界?

 

変える勇気、続ける覚悟

たとえ、戦争がなくたって、

人間はいつ死ぬかわからない存在です。

だから、結婚していても、子どもがいても、

ひとりになる可能性は誰にも等しくあるわけです。

そういう有限の時間を生きているんだなって

すぐ、忘れそうになります。

そういうこと、思い出させてくれる映画が好きです。

ただ、変えることだけがすべてだと思っているわけじゃありません。

その場所に居続けることを選ぶなら、覚悟をもつということ。

専業主婦で仕事をしないなら、

「働きたい。でも、保育園がない。」ではなくて、

「働かない。子供と一緒にいたいから。」というスタンスで生きるほうが、

いいと思う。

 

勇気と覚悟を。

では、また~。

 

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