日本語教師わかばの教え方がうまくなるブログ

日本語教師わかばのことばにまつわるあれこれ。ライターもやってます。旅行と映画と本が好き。

映画No8【僕たちのうちへ帰ろう】文化とはWay of livingである

兄弟は他人の始まり。

「兄弟仲良く」とよく言うのは、

兄弟というのは基本的に、

仲良くないからなのかもしれません。

それはだいたい人類共通のものであるような気がします。

特に、こどもは兄弟で親の愛情をめぐり、

すさまじいけんかをくりかえします。

でも、生きていくうえで、様々な出来事があり、

それを家族として乗り越えていくたびに、

兄弟の仲は深くなっていくのかなぁという気がします。

おはようございます。

わかばです。

今日は、そんな仲の悪い兄弟が父を捜して、

中国・甘粛省あたりの砂漠を旅するロードムービー

映画『僕たちの家に帰ろう』

(2014/中国)

を紹介したいと思います。

監督:リー・ルイジュン

あらすじ(公式サイトより)

両親が放牧する土地を求め、より奥地の草原に移住しているため、兄のバーテルは祖父のもとで暮らし、弟アディカーは学校の寮に住んでいる。兄は弟が母親の愛情を独り占めしていると思い込み、弟は兄ばかりが目をかけられていると感じ、互いに嫉妬し合っている。夏休みが来ても父が迎えに来なかったことから、アディカーは拗ねる兄バーテルを説得して父母を探すため、2人きりの旅に出る。広大な砂漠をラクダにまたがり、干上がってしまった河の跡を道しるべに、ひたすら荒野をたどって行く―。
痩せて枯れてしまった大地、見捨てられた廃村、そして崩壊した遺跡、回廊の変わりゆく風景は、光り輝いた土地が工業化のために消滅し、伝統が新しい社会へと変貌していく様をまざまざと見せつける。そして、いつしか2人の旅は、彼ら《ユグル族》としてのアイデンティティーの探求へと変わっていく…。


(以下ネタバレあります)

 

 さてさて、自分のルーツとは何でしょうか?

彼らは「ユグル族」という中国の少数民族です。

では、何がそれを規定するのでしょうか?

血脈であったり、戸籍の内容だったりすると思うのですが、

一番大事なのは、言語と生活の仕方(Way of living)だと、

この映画をみて感じました。

 

この映画ではおじいさんとお父さんが話す時は、

ユグル族の言葉なのですが、

お父さんとこどもが話すのは、

もう中国語(普通話)なのです。

そして、彼らの通う学校はもちろん中国語で授業がなされます。

兄弟間でも中国語での会話です。

こうして、言語は失われていきます。

 

また、彼らは遊牧民ですから、

家畜を飼い、テントをたてて、草や水の多い地域を

移動しながら生活します。

川やオアシスを求めて、旅を続ける民族です。

この映画の原題は「家在水草豊茂地方」

漢字のとおり、「家は水も草も豊かに茂る地方」です。

 

しかし、その家を家族は奪われます。

 

中国と言う国はすさまじい勢いで発展しています。

遊牧をしているより、儲かる仕事がある。

そう思うと、遊牧をやめる人も現れることでしょう。

草原の真ん中に立ち、

煙突から煙を吐くドデカイ工場を見つめる

アデイカーの目がかなしそうでした。

子どもというのは経済原理に左右されません。

自分を育んでいるものを良く知っているのでしょう。

私たちはいつの間に、それを忘れるのでしょうか。

 

経済原理は、環境も脅かします。

農業を始めたせいで、

水を大量に使うので、

地下水が枯れます。

地下水が枯れたら、

草が育ちません。

その結果、草原は砂漠となります。

 

また、バーテルは立ち寄った石窟で、

半ば朽ち果てている仏画を目にします。

そして、人民公社の新聞がそれを覆っていることも。

ここは歴史に翻弄されてきた場所なのです。

 

最終的に兄弟はお父さんに出会います。

だけど、言葉も交わさなければ、

抱きしめあうこともありません。

 

兄弟はお父さんが放牧をしていると信じてきた。

だけど、お父さんは金(きん)を掘っていた。

もう遊牧民ではない。

ユグル族ではないような気がするのです。

わたしたちは何者なのか?

そんな問いが投げかけられているように思いました。

 

さて、わたしは日本人です。

でも、それを定義するものは何でしょう。

父はもういませんが、実家は農業を営んでいました。

基本的に日本人は米を作り、米を食べて生きる農耕民族です。

天皇陛下という高貴なお方であっても、

稲作をされるのです。

でも、米を作らなくなったら、

作らないのはまだしも、米を食べなくなったら、

それは日本人と言えるのでしょうか?

 

ある、日本語教育界でも有名な先生が

呑みながらおっしゃってました。

文化とはway of livingである、と。

生け花も茶道もたしかに文化なんだけれども、

それよりも、人がどのように生きるか?

それが文化だと肝に銘じようと思いました。

 

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ひたすら前に進むあなたに、立ち止まって考える時間を

では、さようなら~。