日本語教師わかばの教え方がうまくなるブログ

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読書感想【英子の森】語学は活かすのものではなく活きるものだ。

2018年もはや1週間をすぎました。

外は相変わらず寒く、

北風がふきまくっている京都です。

 

こんばんは。

わかばです。

 

松田青子著 「英子の森」

さて、冬休み中にこちらの本を読みました。

英子の森 (河出文庫)

Twitterでどなたかのつぶやきで目にして、

この本の存在を知りました。そして、

英語は彼女を違う世界につれて行く「魔法」のはずだった…… 

 という身に覚えのあるキャッチ―な帯のコピーに

魅かれ購入。読了しました。

 

英語ができれば……どうなんの?

わたしが中高生だった20年くらい前から、

「これからの時代英語くらいできなきゃ」

と言われてきた。

誰ともなくこの言葉をつぶやき、

誰もが焦り、

誰もが英会話にお金をかける。

自分が英語ができないとなると、

「せめて子どもは英語で苦労することがないように……」

と英語教室に通わせる。

おかげで、こども英語教室は今日も盛況。

そして、国からもお墨付きが与えられる

「2020年度より小学校英語教科化」

英語ができないやつは落ちこぼれ。

逆に言えば、英語ができればなんとかなる。

でも、これ本当にそうだろうか。

 

この小説はそこの問いに答えるべくして生まれた小説だ。

 

毒親と仕事と英語と結婚と(あらすじ)

あらすじを説明する。

主人公の英子は父親を亡くし、

母親と二人暮らし。

英語教育に熱心な母親に育てられ、

高校時代にオーストラリアに留学し、

大学は英文科を卒業した。

 

しかし、正社員の職はなく、

派遣切りにおびえながら、

「英語を活かせる」派遣の仕事で、

糊口をしのいでいる。

それはつらい毎日だった。

彼氏との結婚も考えたが、

相手にきっぱりとそのつもりはないと告げられる。

 

やはり働くしか道のなくなった

英子が仕事を探していたある日、

英語を使う仕事 時給1100円

英語を使わない仕事 時給1050円

というのを目にする。

自分の英語が時給の差にして50円であることに

衝撃を受ける。

 

そして、「英語を活かす」ということに、

こだわりすぎていた自分、

そのうしろに背後霊のようにまとわりつき、

自分を操ろうとする母親の呪縛に気がつく。

英子はそのすべてを取り払って

再び生きなおすことを決意する。

 

外国語はプラスアルファとしての武器

外国語というのはそれだけでは仕事にならない。

なぜなら、言葉と言うのは、

コミュニケーションの道具でしかないからだ。

例外的に仕事になっているのは、

翻訳、通訳、語学教師だけだ。

それも、これからのテクノロジーで

機械に置き換えられていくだろう。

 

しかし、プラスアルファとしてなら、強い武器にはなる。

英語のできるエンジニア。

英語のできる看護師などは、

今後重宝されるだろう。

 

1年どこかに留学して、

TOEICで800-900とるちょっと英語が得意な人間など、

掃いて捨てるほどいるし、

その前に、アメリカやインターナショナルスクールで

育ったバイリンガルも大勢いるのだ。

英語はできるに越したことはないというレベルなのだ。

 

だから、今せっせと英会話スクールに通っている

こどもたちも英語が得意な大人になっていくだろう。

けれど、それが飯のタネになるなどとは

ゆめゆめ思ってはならない。

この本はそれを警告していると思う。

 

外国語は活かすのではなく活きるもの

じゃあ、外国語を勉強しても意味がないのか?

と言われたら、答えはNOだ。

意味は大いにある。

外国語は「活かそう」と思うからつらいのだ。

今は何の役にも立たない。

 

それでも、単語を必死で覚えて、文法の問題を解きまくり、

ネイティブと話して恥をかきまくれ。

 

そうやって、日本語ではない言語のもつ

リズム・音・意味・文化・歴史を自分の体の中に

刻み込むのだ。

それが外国語を身につけるということ。

これにゴールはない。

たとえ、TOEICが990点でもそこはゴールではない。

 

ゴールのない外国語学習という試練と苦悩を

味わったものだけがもつ人間味というものがある。

 

これから生きていくこの先、

いつか花が咲くように、必ず人生の役に立つ。

それは飯のタネにはならないかもしれない。

しかし、人生を彩る花にはなるだろう。

 

 

英子の森 (河出文庫)

英子の森 (河出文庫)

 

 

 

そんな花を咲かしてみようじゃないの?

では、また~

 

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