日本語教師わかばの教え方がうまくなるブログ

日本語教師わかばのことばにまつわるあれこれ。ライターもやってます。旅行と映画と本が好き。

皇后陛下のスピーチを読んで読書について考えました

10連休2日目、ぼんやりとテレビを見ていましたところ、

「そこまで言って委員会」で美智子皇后陛下のスピーチが、

紹介されていました。

 

こんにちは。

わかばです。

 

f:id:wakaba78:20190428190650j:image

 

どのスピーチかというと

第26回(1998年)IBBYニューデリー大会基調講演というもの。

IBBYというのは国際児童図書評議会のことで、

美智子皇后陛下は、現地へ赴くことがおできにならず、

1998年9月21日にビデオ上映されたそうです。

すぐに読んでみたい!と思ってググると、

宮内庁のホームページに全文がありました。

第26回IBBYニューデリー大会基調講演 - 宮内庁

 

スピーチというくらいだから

さくっと読めるかと思いきや、

なんとも重厚なボリュームのあるスピーチでした。

 

美智子皇后陛下がご自身の子供時代の読書を

振り返られながら、

その大事さを語るという内容なのですが、

その教養の深さと言葉の重みに、

思わず涙してしまいます。

 

根っこをもつこと

美智子皇后陛下の子供時代は第2次世界大戦の真っ最中で、

疎開をされていたそうです。

その疎開先で読んだ本へお父上がお持ちになり、

それをお読みになったそうです。

そして、それは「日本神話」の本だったそうです。

そのことについてこう語っていらっしゃいます。

 

父がくれた神話伝説の本は、わたしに、個々の家族以外にも、民族の共通の祖先があることを教えてくれたという意味で私に一つの根っこのようなものを与えてくれました。本というものは、時に子供に安定の根を与え、時にどこにでも飛んでいける翼を与えてくれるもののようです。もっとも、この時の根っこは、かすかに自分の帰属を知ったという程度のもので、それ以後、これが自己確立という大きな根に少しずつ育っていく上の、ほんの第一段階に過ぎないものではあったのですが。

出典:第26回IBBYニューデリー大会基調講演 - 宮内庁

 

この「根っこ」と「翼」の話。

私は子供時代にそこまで読書をしたわけではないけれど、

七五三参りの際、神社よりいただいた神話の絵本を

何度も読み返した記憶があります。

「ヤマタノオロチ」とか「因幡の白兎」とかです。

 

そして大人になってから、留学したり、

海外で働いたりした時、いつも考えさせられた

「日本人とは何か」という問いに対する、

ヒントがあったような気がします。

それが私の「根っこ」と「翼」です。

 

愛と犠牲の不可分性

また、スピーチの中でヤマトタケルと弟橘姫の逸話を紹介しました。

 

こんな話です。

ヤマトタケルが天皇の任務を遂行しようと海をわたる時、

海の神の怒りにふれ、海が荒れました。

すると、ヤマトタケルの妃である弟橘姫は

自分が「いけにえ」となることを決意し、

歌を詠みますが、それがヤマトタケルが、

前に自分を守ってくれたことに対する感謝の歌だったのです。

 

そのことについて、美智子皇后陛下はこのように書かれています。

弟橘の言動には、何と表現したらよいか、建と任務を分かち合うような、どこか意志的なものが感じられ、(中略)あまりにも美しいものに思われました。「いけにえ」という酷い運命を、進んで自らに受け入れながら、恐らくはこれまでの人生で、最も愛と感謝に満たされた瞬間の思い出を歌っていることに、感銘という以上に、強い衝撃を受けました。はっきりとした言葉にならないまでも、愛と犠牲という二つのものが私の中で最も近いものとして、むしろ一つのものとして感じられた、不思議な体験であったと思います。

出典:第26回IBBYニューデリー大会基調講演 - 宮内庁

 

任務を分かち合うというところは、

今上陛下と皇后陛下のお姿を思い浮かべずにはいられませんでした。

 

お二人とはくらべものにもなりませんが、

たった一人でいれば、自分の時間もお金も、

自由になったろうと思うことがあります。

でも子どもがいるとそうはいきません。

幼い頃は睡眠時間を犠牲にして、

今はお金を犠牲にしています。

自分が病気になった時は、

「病気になったのが娘でなく、自分でよかった」と思いました。

愛と犠牲は不可分であるというのは、

自分が親になってみて初めてわかった気がします。

 

複雑さに耐える

読書は「筆者との対話だ」とか

「自分の経験を増やすことだ」とか言われますが、

その通りだと思います。

私は子どもの頃から読書をしてきたわけではありません。

しかし、周囲の影響で高校生くらいから読書をはじめ、

それ以降、読書に親しんできたものとして、

本の中の言葉が少なからず私を助けてくれました。

 

読書は、人生の全てが、決して単純ではないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人の関係においても。国と国との関係においても。

出典:第26回IBBYニューデリー大会基調講演 - 宮内庁

 

本当に人生って複雑ですよね。

そして、それに耐えていかなければならない。

という言葉は、皇后陛下としてはもちろんのこと、

人間としても常に成長しようとされてきた

覚悟と努力が伺えると思いました。

 

全編を通して、天皇陛下および皇族方、

そして国民に対する愛と

深い教養が感じられる文章でした。

泣きました。

本当に尊敬すべき皇后陛下です。

みなさん、平成の最後に是非是非お読みください。

 

www.kunaicho.go.jp

 

そして、天皇皇后両陛下、

長い間、お疲れ様でした。

平成の御代の間に、子どもだった私は

大人になり、母となりました。

人間的にも少しは成長できたかなと思いますが、

これからもよき人間でいられるよう、

努力したいと思います。

 

では、また〜

 

スピーチの中で紹介されていた本

でんでんむしのかなしみ

でんでんむしのかなしみ

 

 

古事記と日本書紀

 

マンガ遊訳 日本を読もう わかる日本書紀1 神々と英雄の時代

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愛と涙と勇気の神様ものがたり まんが古事記

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皇后陛下の本

 

橋をかける (文春文庫)

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