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書評【満州女塾】満州で結婚させられ取り残される女性の物語

以前、この本を使って、勉強会をしていたことがありました。

「わからないことは希望なのだ」―新たな文化を切り拓く15人との対話

「わからないことは希望なのだ」―新たな文化を切り拓く15人との対話

 

日本語教育業界のレジェンドともいえる、

春原憲一郎氏とルポライターの杉山春氏の対談を読みました。

 

その杉山春さんの処女作である

「満州女塾」はいつか絶対に読みたいと思っていました。

満州女塾

満州女塾

 

 しかし、もうすでに絶版になっているのか

アマゾンでは一冊6000ほどのプレミア価格なのでした。

 

というわけで、諦めていたというか、

忘れていたのですが、ふと「図書館にあるのでは?」

と思い、京都市図書館の蔵書検索で調べてみました。

するとあるではありませんか!

しかも、最寄りの図書館にちゃんとある、

 

というわけで、早速図書館で借りて読みました。

わたしはあまり図書館で借りることが好きではないです。

本は自分のものにしたいし、

アンダーラインや書き込みも自由にしたい。

 

でも、この本は特別だと思って借りてきました。

というのも、わたしの中に「日本人とは何か?」

という問いがいつでもあり、

その問いについて突き詰めて行くと、

先の大戦は避けては通れないものだからです。

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満州国とは?

満州国とは現在の中国の東北地方にあった国。

日本の傀儡国家で、ラストエンペラー溥儀を皇帝にしました。

日本からはたくさんの人が移住。

特に農村の次男三男は、広い土地を開墾し、

思いっきり農業ができるということで、

開拓民として満州に渡った者も多かったといいます。

 

わたしの実家の近所のおばあさんも満州に渡ったそうですが、

終戦ののちに滋賀県に戻り、なくなる前は朦朧とする意識の中で

「満州ええとこだっせ。いつでも遊びにきておくんなはれ」

と言っていたと父から聞きました。

 

その時代でなくても、20代になったばかりの頃って、

「ここではないどこか」を夢見るものなのでしょう。

日本から新天地・満州を目指して

多くの若者が旅だったことは確かです。

「開拓」という名のもとに。

満州女塾とは?

そんな独身の開拓男子はそのままにしておけば、

現地の女性と結婚するでしょう。

だってそこは、もともと中国の土地だったのですから。

でも、それだと日本政府は困るわけですね。

支配階層としての日本人が必要だった。

『女子拓殖指導者提要』には次のようにあると

本書では書かれています。

ー満州開拓事業は「百万戸」の「大和民族」によって遂行さるるものであるが(略)この百万戸は純粋な大和民族の純血を保持せる者によって構成されねばならない。一滴の混血も許されないのである、(略)女性は深くこの点に思いを致し、自ら進んで血液防衛部隊とならねばならないー

人を人とも思わぬというか、おぞましいというか、

これがわずか数十年前のことなのですよね…。

 

この満州女塾は熊井竹代という女性が仕切っていたのですが、

この女性は地元の名士の妻で、

なかなかのやり手だったようです。

知事とか軍の偉いお方とかでもタイマンで話せるというような。

 

その人が日本の農村からうまいこと言って女の子をまとめて、

満州の男とマッチングしていたそうです。

 

もちろん、連れて来られた女の子たちは、

自分が結婚させられるなんて知らず

満州で働けるとしか思っていなかった女の子も多かったようです。

 

騙されたと思いながらやむなく結婚した人、

恥を忍んで帰国した人などもいたようです。

 

しかし、終戦時に満州にいた人は、

もちろんそのまま取り残されました。

 

満州女塾の女性たちが嫁いだのは満州といっても

未開の開拓地、今でいう黒竜江省のロシア国境付近です。

 

そんな場所から幼い子供を連れて逃げてきた。

もちろん、中国人の妻になったり、

中国人の家で女中として働きながら、

逃避行を続けて生き延びてきたのです。

 

そんな女性たちを丹念に取材し、

力強い筆致で書かれたルポ。

グイグイ読ませる本でした。

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感想

 

綺麗事に騙されて満州に連れて来られ、

結婚させられて、挙げ句の果てには、

取り残される女性。

 

これっていつの時代でもありますよね。

わたしはこれを読んで外国人労働者のことを

思い出しました。

 

ベトナムやネパールから、

甘い言葉で誘われて日本にやってきたものの、

勉強なんかする時間なくて、

ひたすら働かされる。

そして、故郷にはそう簡単に帰れないような

システムに出来上がっている。

 

歴史に学び、繰り返さないために、

私たちができることは何か?

考えたい。

 

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